民意とのズレ2005年08月29日 08:27

 解散以来、自民党の執行部は、今度の総選挙を郵政民営化の賛否を選挙民に問う「国民投票」と位置づけ、「郵政こそ争点」を強調し続けている。しかも、法案に反対した同党議員に離党を勧告、その選挙区には郵政民営化支持の著名人や官僚を「刺客」候補として送り込み、公然と反対派の封殺を狙っている。どんな組織でも、異論の存在を認めなくなったら崩壊の前兆だ。何より、党内をひれ伏させ、政敵の抹殺を図る専横的なやり方は、民主国家の政権政党として、恥ずべきことである。
 自民党執行部が、これほどまでに躍起になるのは、"天下人"小泉純一郎が、強大な権力・権限を振るって、自ら「執念」とする郵政民営化の"大業達成"を叫び、なりふり構わず突進させているからにほかならない。だが、その是非を問われる国民の側は、皮肉にも他の政治課題の先決を望んでいる。
 解散前の各紙の世論調査でもほぼ同じ傾向だったが、解散後の8月13~14日に毎日新聞が行った全国世論調査でも、総選挙で最も重視する政策課題を質した問いに対し、「年金・医療・介護」の社会保障が36%で1位、次いで「景気対策」が22%で2位、さらに「税制改革」が17%で続き、「郵政民営化」は14%で4位にすぎなかった。また、朝日新聞が15~16日に行った調査でも、郵政民営化を総選挙の「最大の争点とは思わない」が52%を占め、「思う」は38%だ。自民党の執行部が、大音声で「郵政対決」を喧伝し、マス・メディア、殊にテレビ各局がこれにほぼ呼応しているのに、現実には、首相の意図と民意との間には大きな隔たりがある。
 首相は、なぜ郵政の強行かと問われ、「郵政民営化があらゆる改革の起点であり、財政改革、税制改革、年金改革、……みな繋がっている」と言うが、その繋がりの仕組みについても、十分に説明が尽くされているとは思えない。政権の意図が明確かつ具体的に国民に伝わっておらず、国民の側が求めているものとの食い違いが明らかなのに、「民意に問う」では無責任ではないか。民主国家の政権担当者が民意を知る術は、総選挙に限らない。世論調査でも知り得るはずだ。(;)