新聞の無法(4)2006年05月25日 08:06

 公取委が、特指5分野の見直しを言い出したのは、1)独禁法が原則として禁じている値引きの規制などの不公正な行為を、特定分野に限って同じ法の下に認めるのは整合性に欠ける。2)5分野の特指をした当時の商取引の状況と現状に開きができ、指定の意味がなくなっている。3)価格の自由な設定は、市場競争の手段として最も重要な要素だ。4)特指の妥当性が、制定時以降まともに論議されていない、──の4点が柱だ。背景には、2002年7月に就任した竹島一彦公取委員長の、珍しく権勢を恐れず法理を通そうとする剛直な公務員気質もある。
 特に新聞特指については、1)特指の存在が、長期購読者や口座振替購読者などへの割引を拒む理由になっている。2)他方、特指があるのに景品などを使った実質的な値引きが公然と行われ、特指が空洞化している。3)新聞は、独禁法に基づく「再販売価格維持制度」の特認を受けており、例外的に新聞社と販売店の間で自主的に定価を維持できる。従って、特指で公権力による規制を求めるのは屋上屋を重ねるもので、新聞業の自主性にも反する、──などと見直しの必要性を主張している。
 対する新聞側の主張はこうだ。今年3月15日の「新聞協会特別決議」などによると、1)国民の「知る権利」に応える新聞の使命は、読者の住む場所を問わず、「同一紙・同一価格によって戸別配達」されることによって達成される。2)新聞の定価割引を禁じた「特指は、新聞再販制度と一体」であり、特指の見直し(筆者注・「廃止」の誤りか)は、再販制度を骨抜きにする。3)販売店の価格競争は、配達区域を混乱させ戸別配達網を崩壊に向かわせる。4)戸別配達網の崩壊は、多様な新聞を選択できる読者・国民の機会均等を失わせることにつながる。5)新聞は日用品など他の商品と異なり「知識・文化を内容とする商品」であり、価格競争にはなじまない、──などである。
 新聞側は、以来、お手のものの紙面にお手盛りの大特集を組んだり、社説で特指堅持を唱えたり、その上、新聞を敵に回したくない(実は意のままに操縦したい)政界に強力に働きかけ、今月半ばには全政党を味方につけてしまった。(;)