新聞の無法(5)2006年05月26日 08:17

 いったい新聞経営者や政治家は、独禁法の精神を、どう理解しているのだろう。24日には、自民党の中川秀直政調会長が、竹島公取委員長を党本部に呼んで、特指の存続を強く求めている。同党内には、議員立法で特指を維持する動きもある。新聞・政治両業界の結託には、両者の利己的な既得権益擁護の匂いが鼻を衝く。法の精神と国民の利益は想定外だ。
 検証してみよう。まず、新聞側が主張し、各政党が認めた「同一紙・同一価格」だが、実態から言って真っ赤な嘘としか言いようがない。公取委側が言うように、特指そっちのけに、景品を使った実質的な値引きが、どの地域でも日常茶飯事であることは、国民が一番よく知っている。
 しかも新聞販売業界には、2000年9月1日付で公取委が告示した「景品提供の制限に関する公正競争規約」で、購読者との「取引金額の8%、または6ヵ月分の購読料の8%の、いずれか低い額の範囲内での景品提供」は「6・8ルール」として合法化されている。従って、新規に全国紙の朝夕刊をセットで半年契約し、少なくも1900円弱の値引きを受けている差別対価の購読者が厳存する。
 同一紙・同一価格が嘘であることを示す、さらにはっきりした現実は、地域によって同一紙の同じ朝夕刊セットでも、内容は同一でない点だ。全国紙の場合、東京、大阪、九州、名古屋、北海道などで発行されている新聞は、もそれぞれ内容もページ数も異なる。
 広告需要に地域差があるため、全国同一の紙面にするだけの広告が各地では集まらず、特集記事などが割愛される。つまり、地方では同じ購読料を払っても、中身を間引かれた「高い新聞」を読まされているのだ。
 東京と地方の選挙区を往復している政治家たちは、この事実を最もよく知っている読者のはずだが、新聞業界の保身の嘘に耳を閉ざしている。国民を騙せるとでも思っているのだろうか。誰のための議席なのか。
 嘘というより、論理の態をなしていないのが、「特指は再販制度と一体であり、特指の廃止は再販制度を骨抜きにする」という主張だ。再販制度は、新聞社が販売店と定価販売維持の契約を結ぶことを認める制度である。独禁法では原則禁止の行為だが、新聞については特例で認められている。つまり、「定価で売っても独禁法違反にならない再販制度」と、「定価で売らないと独禁法違反になる特殊指定」は、同じ効果を狙う二重の規制であり、片方だけで充分とも言えるのだ。(;)