商売と良心(6)2006年06月22日 08:05

 既成のメディアにウェブの世界までが声を和して、「時代の寵児」とばかり持て囃した村上世彰が、インサイダー取引(証券取引法違反)容疑で逮捕された=6月5日。
 多少誇らしく断らせて頂くが、彼が逮捕されるまで1年余、当庵はただの1度もこの人物の名を話題にしなかった。堀江貴文の場合と同様に、批判して取り上げるにせよ、社会的なコミュニケーションの場に登場させることが、彼らの虚名を高めることを助けると考えていたからだ。やっていたことは、庵主の目には、すでに「悪事」と映っていた。
 村上世彰は、逮捕される数時間前に、わざわざ記者会見を開いて言った。「カネ儲けは悪いことですか。ルールの中で、カネを儲けてなぜ悪い!」と、声を励まして自分の正当性を主張した。──そう、カネ儲けは、悪いこととは言えない。額に汗し、己が才覚と知恵・力量を傾けてせっせとカネを儲けることは、悪事ではない。
 しかし、その行為が、他人を犠牲にしたり、他人の損害の上に成り立っている場合は、「なぜ悪い!」と開き直るわけにはいかないだろう。まして、違法では話にならぬ。
 現に村上世彰は、フジテレビの経営支配につながることをほのめかして、ニッポン放送株の大量取得をライブドアを率いていた堀江貴文に勧め、その意思を確認して自らもニッポン放送株を大量買いし、売り抜けた疑いを持たれている。
 両者のカネ儲けのために、寝込みを襲われたフジテレビは、結局、ニッポン放送を子会社化するために1,100億円ものカネをライブドアに支払わねばならなかった。そればかりか、フジテレビが行ったニッポン放送株の防戦TOBに応じた某電力会社取締役会も、1億円からの資産を減らしたとして、株主代表訴訟の危機に曝された。
 村上世彰の阪神電鉄株のTOBは、阪急HDによる対抗TOBによって阪神電鉄の統合という結果で落着したが、阪急HDは予定を700億円も上回る約2,500億円を注ぎ込むことになり、村上ファンドは数百億円を儲けた。こんな儲け方をして「カネ儲けは悪いことですか」は、ない。(;)