軍神の遺影(8)2006年07月12日 08:04

 決戦に臨んだ「軍神」の「隼」二型と、「ブリストル・ブレナム」のおそらく「MK IV」型の火力を比べてみよう。私は軍事専門家ではない。素人のごく単純な理論的比較の試みと心得ていただきたい。
 前回述べたように、「MK IV」は、5基の7.7mm機銃を持っていた。これに対し、「隼」二型は12.7mm機関砲2門だった。一般に、銃砲弾は大きく重いほど破壊力は大きくなるから、単純に言うと12.7mm機関砲弾の方が、7.7mm機銃弾より1.7倍ぼど破壊力が大きいと思われる。しかし一方で、単位時間当たりの発射弾数は、口径の小さな銃砲の方が多いだろう。
 そこで、「MK IV」型搭載の機銃の能力を「1」と仮定した時の、「隼」二型の機関砲の性能を、砲弾の破壊力で1.7倍、単位時間当たりの発射弾数で0.9倍と置いて推算してみる。すると、

 「MK IV」 5基×1.0(破壊力)×1.0(発射弾数)=5.00
 「隼」二型 2基×1.7(破壊力)×0.9(発射弾数)=3.06

と言う計算が立つ。 しかし、これはあくまでも、「総火力」の比較である。空中戦で伝統的に優位とされてきた後方からの攻撃に対しても、火力に限っては、攻撃される「ブリストル・ブレナム」の側が、ざっと4対3の優位に立てるのだ。
 同様に試算すると、火力の点で「隼」二型が優位ないし互角に立てるのは、真横からの3対2の優勢、向かって左斜め前からの突撃で3対2の優勢、正面からの挑戦で3対3の互角、ということになる。だが、大きな差は「MK IV」 の燃料タンク、エンジン周り、操縦席の高い防弾性能だ。
 防弾性能を考えると、両機の戦闘力の差は、かなり「MK IV」 優位だったはずである。「軍神」は、火力不足を補おうと敵機に接近しすぎて被弾したとされているが、優れた防弾性能と計算し尽くされた火器配置によって、「隼」の火力が封じられていたと見るべきではないか。
 「加藤機」は右翼から発火し反転墜落した状況から、「軍神」自身も被弾したらしい。防弾の弱さは否定できまい。(;)