女性が解る本2006年08月02日 08:01

 最近読んだ本で、姫野 友美著 『女はなぜ突然怒りだすのか?』=角川書店・2006年3月初版、6月4版=は、実に面白く、勉強になった。医師の著書にしては、文章も滑らかでユーモアもたっぷりだ。
 人生も終幕に入り、「女性」についてもさまざまな知見を重ねて来たつもりだが、いまだに不可解な部分が多い。男にとっては、「女性」より先順位で知りたいことが多く、「所詮、女は解らぬ」と、その場しのぎで投げだしてきた報いでもあろう。
 しかし、女性たちの思考法や行動が理解できずに、深刻に悩んでいる同憂の友は多い。そして男たちの大半が、不可解の核心に、まず「産む性」の肉体があると考える。
 ところが著者は、男女の決定的な違いが、「脳」の解剖学的な構造差に発していると指摘する。心療内科の開業医ならでのアプローチだ。
 著者によれば、女性の脳は、感情の連絡回路ともいうべき間脳の「前交連」と呼ぶ部位や、左右の脳をつなぐ連絡橋に当たる「脳梁」という部分が、男性のものに比べ際だって太い。このため、好き嫌い、快不快、怒りや恐怖などの感情や言語系の情報を、脳内で一気に伝えやすく、これが女性を「感情的」にしたり「お喋り」にしたりするというのである。
 著者はまた、こうした脳の構造上の違いのほかにも、男性の理解を苦しめる基に、各種のホルモンの働きがあり、これには「産む性」の肉体的な特性と、生理の周期性が密接に関係すると説く。読み進むうちに、男性とのあまりの違いに驚きが深まるとともに、長年の謎が次々に解けて行く。
 女はなぜわがままなのか、なぜダイエットに励むのか、なぜブランドものを欲しがるのか、なぜメニュー選びに時間がかかるのか、なぜトイレや給湯室で長々と密談するのか、……。
 こうした、男には理解も同調も容易にできない心理や行動について、読む者を次第に得心に導く。女性の著者が、妙に気張った女権論などに踏み込まず、科学の目で淡々と「女性」を裸にして見せた点、秀逸だ。(;)