新聞の史観(15)2006年09月14日 08:00

 日露戦争の講和会議を仲介し、日本のために便宜を図ってくれたセオドア・ローズヴェルトだったが、アメリカ合衆国大統領としては、遠からず日本が、侮れぬ強国として太平洋の覇権を競う相手になると見抜いて、警戒心を深めていたようだ。
 証拠がある。──米国会図書館に残るローズヴェルトの、ノックス上院議員(Philander Chase Knox 1853~1921年)宛の手書き書簡は、彼の心底を窺う上で極めて意味深い。
 ノックスは、ローズヴェルトの後継者、ハワード・タフト第27代大統領(William Howard Taft 1857~1930年)の下で国務長官を務めた人物。書簡には日付が見当たらないが、文面から推して1909年4月4日の、タフト大統領の就任直前に書かれたとみられる"申し送り"だ。
 ローズヴェルトは、書簡の冒頭で、「タフト氏と貴君には、就任早々、ありとあらゆる政務がのしかかってくるでしょう。しかし、新政権を担われるご両人に対し、最も重大かつ永遠の外交問題について、私から申し上げておきたい。それは、合衆国と日本の関係である」と述べている。
 そして、「貴方がたの在任中には、日米間に些細な紛争さえ起こらないであろう。しかしキューバやヴェネズエラ、中米や欧州の勢力との先鋭な紛争は大いに起こり得る。ただ、これらの相手との深刻な国際紛争が、破滅的な戦争につながるとは考えられない」「ドイツや英国とも然りである」と書き、独立以来、米国が争ってきたヨーロッパの旧勢力との紛争は、「頭痛のタネ(annoyance)程度のもの」にすぎないと評価して、続ける。
 「だが、日本とは事情が違う。この国は、最も恐るべき軍事強国(military power)である。その国民は、特異な戦闘能力を持っている。彼らは極めて誇り高く、好戦的で、非常に激しやすい。そして、相反する2つの意識 (two contradictory feelings) によって動かされている」と、当時の日本人の対外感情を、かなり正確に分析した上で、排日の思想を明け透けに述べているのである。(;)