核を考える(4)2006年11月17日 08:03

 10月10日の北朝鮮による核実験公表の直後、共同対処を図って日中韓を歴訪したライス米国務長官は、同月18日に来日、翌日の安倍首相との会談で、次のように語ったという。
 「今回の歴訪で最初に日本に来たのは、日米同盟がいかなる状況でも揺るぎなく、強いものであることを明確にさせるためである。また、アメリカが日本を防衛する決意を有しているのは、日本の安全保障が、アメリカの安全保障であるからだ」。
 ライス長官が、ことさらに「日米同盟の堅持」と、「日米安保体制維持の決意」を強調し、「核の傘の意義」を示唆したのは、単なる外交辞令ではなく、アメリカの率直な意向表明であろう。日本を米国の「核の傘」の内に留めておくために、日本が北朝鮮の核保有を、核武装に踏み切るきっかけと根拠にさせてはならない。──今、米国政府の日本への願いは、この一点に集中する。
 そして、日本の核武装を最も恐れている中国も、北朝鮮の核保有をその契機と口実にさせてはならないとの認識で、米国と一致する。韓国の盧武鉉大統領は、2002年暮れに当選を決めた直後にアメリカへ特使を送り、「北朝鮮の核武装は、日本向けだから心配していない」と、「太陽政策」継承への理解を求めたくらいだ。すでに、北朝鮮の核保有を想定していたのかも知れないが、いざ現実となると、日本の核武装に結びつくことを最も恐れている一人であろう。
 北朝鮮の核実験は、このような全く新しい状況を生んだ。ために、6者マイナス北朝鮮の5者の姿勢にも、急速に真剣さが加わってきた。まこと、核の「外交力」の強さだ。しかし、北朝鮮が核を持ったことを知った後も、あくまで交渉を中心に、その廃棄を求めて行く限り、北朝鮮は核武装をより高度化するための時間稼ぎに終始するだろう。実の伴った締め付けが不可欠だ。かつてヒトラーの暴走を、平和交渉で阻止しようと固執したあげく大戦を招いた例を、ゆめ忘れてはならない。(;)