国の情報発信2006年12月12日 08:03

 茶筒は、真上から見れば真円だが、真横から見れば長方形である。ことほど左様に、モノの姿を正確に見ることはむずかしい。ためつすがめつ、さまざまな角度から見ないと、本当の姿を正しく知るのは困難だ。まして、さまざまな利害が絡み合う世界の出来事は、一つの方向からだけ見る、あるいは見せられていたのでは、真相はつかめない。
 世界中が、グローバル・スタンダードとやらを掲げ、ビジネスに技と知恵、資本力と宣伝力を競う様式が強調される反面、国家や民族へのこだわりは却って強くなった。
 1991年に、ソ連が崩潰して「東西冷戦構造」が瓦解すると、代わって世界の潮流になったのが、良し悪しの論議は措いて、復権した「民族主義」と「ナショナリズム」である。
 人々が、冷たいイデオロギーの教条や鉄の規律、一触即発の臨戦態勢下の非人間的な緊張の暮らしに嫌気して、家族・同胞・国家の温もりと伝統の誇り、何よりも自由と、豊かさへの可能性を選んだ結果だ。 
 ナショナリズムに押されて、情報発信も多元化した。イラクやアフガニスタンでの、血みどろの「文明の衝突」を、CNN(Cable News Network)やBBC(British Broadcasting Corporation)とは違った角度から報じているカタールのテレビ局「アルジャジーラ=Al Jaseera」は、開局10年を機に、11月15日からアラビア語に加え、英語の発信も始めた。インターネット版もあるから、ムスリムの考えや見方を知る情報源として貴重だ。
 独自のナショナリズムに固執するフランスも、12月6日、国営の国際テレビ局「FRANCE 24」を開局し、VOA(Voice of America)や BBCに対抗しようと意欲満々である。まず仏語・英語だが、新年にはアラビア語、スペイン語の放送も始めるという。開設を推進したシラク大統領は、「大国には、独自の世界観を、世界に知らせる義務がある」と語っている。(;)