核感覚の変化2007年01月11日 08:02

 7日の日曜日午後、テレビ東京の人気番組「日高義樹ワシントン・リポート」は、キッシンジャー元米国務長官との単独インタビュー。現代史の立役者も老けたな、という印象だったが、1923年5月生まれの83歳。無理もない。例のくぐもった声で、日本の核武装を当然視し、「実現は10年内」と予測してみせた。彼の持論だ。いぶかしげに、「まだ開発に着手していないのか」とも言った。
 一方、7日付けの英紙『The Sunday Times』電子版は、ニューヨークのウズィ・マーナイミ(Uzi Mahnaimi)、ワシントンのサラ・バクスター(Sarah Baxter)両記者による「イラン作戦」という長文の記事を掲載した。テル・アヴィヴの都心深くにあるイスラエル空軍司令室の指揮の下、ネゲヴ砂漠とテル・アヴィヴ南方のテル・ノフ(Tel Nof)を基地とする2つの急襲飛行隊が、救難へりまで待機させて、イランの核施設へのピン・ポイント爆撃の訓練をしている、という書き出しのリポートだ。
 このところ急速に国民の支持を失っているようだが、イランのアフマディネジャド大統領は、国家としてのイスラエルの存在を認めず、国連安保理の制裁決議を無視して、独自の核開発を推進している。記事によると、首都テヘラン南方のナタンズ(Natanz)にあるウラン濃縮施設は、強固な掩蔽壕の奥底に、遠心分離器を並べて操業を続けているとされる。
 このナタンズが、イスラエル空軍の第一の標的。作戦計画では、まずレイザー誘導の通常爆弾で、掩蔽壕の強化コンクリートの重層に深い穴をうがち、次いで爆発力の弱い1キロトン程度の核爆弾を、その穴に撃ち込むのだという。目算では、核爆弾は地下深くの施設と掩蔽壕をともに破壊するが、放射能汚染の範囲は限られるという。
 記事は、「このような計画を、米政府は決して容認しない」との米アナリストの見解を添えているが、イスラエル空軍は、1981年にはイラクのオシラク(Osirak)にあった核工場を急襲、破壊している。国家の存続のためには、今や1キロトン程度の戦術核は、許容される寸前なのかも知れない。(;)