イラン新戦略2007年01月12日 08:02

 ブッシュ大統領は、10日夜(日本時間11日午前)、全米に向けた約20分のテレビ演説で、泥沼化したイラン情勢からの脱出口を探る「新戦略」を発表した。その柱は、すでにイラクに展開中の約13万の米軍に加え、新たに陸軍5個旅団約1万7千と、海兵2個大隊約4千計2万1千人を追加投入するというものだった。反対の声は高まっており、あるいはとの期待もあったが虚しかった。
 昨年秋の中間選挙で民主党が勝利し、米史上初の女性下院議長になったナンシー・ペローシ民主党院内総務を筆頭に民主党の多数、米国内の各種世論調査でも6割近くが、イラクからの「早期撤退・増派反対」を叫ぶ中での、ブッシュ大統領の開き直りに似た決定だ。
 米国の危機を見かねて、パパ・ブッシュの下で国務長官を勤めたジェームズ・A・ベーカー氏ら連邦議会の超党派諮問機関「イラク研究グループ(ISG=Iraq Study Group)」も、先月6日に発表した報告書で、18カ月以内の期限付き撤退を勧めていたが、無視された形になった。
 ブッシュ大統領が、これほどまでに“中央突破”に拘る理由は体面か。「新戦略」発表の演説で、内戦状態にまで悪化した現状を招いた責任が自分にあることを、「the responsibility lies with me」と、さすがに認めた。しかし同時に、イラクの反政府・反米テロ集団を完全に掃討するだけの兵力が不足したと、兵力の過少投入という過ちを根拠に挙げた。かつての盟友ラムズフェルド前国防長官の、効率偏重の兵力展開に責任を転嫁したものと取られても仕方ない。
 不快だったのは、「イラクでの失敗は、米国にとって取り返しのつかないものとなる」とし、「撤退は、イラクにおけるアメリカの試みの失敗を宣告するものであり、中東全域に混乱を広げ、米国に向けての(ミサイル)発射台を備えさせ、イランの核開発を勢い付かせる」と、大げさに恐怖を煽った点だ。いったい誰が、戦乱に火を点けたのか。大統領も、国民も、経緯を静かに考える時だ。(;)