からたけわり2007年04月17日 08:05

 日本の伝統的な市民文芸の、相当な部分が、武張った「さむらいもの」だ。歌舞伎、浄瑠璃、講談、草双紙などには、しばしば武士たちが、ダンビラをかざして立ち回る場面が登場する。
 そんな場面の表現に、「まっこうからたけわり」というのがあって、長いこと気になっていた。場面としては、大上段に構えた太刀を、敵の頭上に振り下ろして斬るアクションだ。
 とにかく「まっこう」は、「額の真ん中」とか「兜の鉢の前部」、つまり野球帽でいえばチームの頭文字が縫いつけてある部分だから、刀を打ち下ろす場所は、それと分かる。
 問題なのは「からたけわり」の部分である。いったい「から+たけ+わり」なのか「から+たけわり」なのか「からたけ+わり」か、それとも「からたけわり」なのか。
 重い太刀を振り下ろすのだから、「わり」は「割り」であろうと、容易に見当はつく。だが、「一瞬、一丈ほども空中に飛び上がった武蔵、櫂を削った手作りの木刀を、天空から小次郎めがけてまっこうからたけわりーッ」などという講釈師の語りを聞いていると、どうも「からたけわり」と称する剣術の決まり手がありそうに思えてくる。
 そこで「からたけ」を探ってみると、「幹竹・唐竹・漢竹」の字が当てられており、諸説はあるが、昔の中国から渡って来たという竹で、いずれも細く、節の間隔が長く、全体に真っ直ぐに育つ性質から、笛や筆の軸、矢柄に使われる篠竹のような種類、さらに淡竹(はちく)、布袋竹(ほていちく)までを指して、どうも豪快に上から下までズンバラリンと斬りおろす様を表すには役不足だ。
 だが、さらに調べるとあった、あった。「幹竹割」を当て字に、18世紀の世話物浄瑠璃『夏祭浪花鑑=なつまつりなにわかがみ』を出典に、「捕ったとかかるを幹竹、梨割、車切、はらりはらりと薙倒す」と用例がある。やっぱり「幹竹割」という「斬り方」なのだ。因みに「梨割」は頭を砕く斬り方、「車切」は胴を輪切りにする斬り方だそうである。これで、長年の宿題も「からたけわり」。(;)