レンダリング2005年07月08日 08:28

 前回のこの欄で報告した、米国産の農・畜・水産物「輸出振興宣伝助成金」の割当てを、395,099ドル(約4,385万円)受けている団体に、National Renderers Association (NRA)がある。
 <renderer>という言葉は、研究社刊の『新英和大辞典=NEW ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY』 最新第6版にも載っていない。ただ、<render>の末端の1訳に、「脂肪などを溶かして精製する」とあり、<rendering plant>として「屠場・調理室・家畜の死体などから出る油脂を処理して石鹸・肥料などを製造する工場」と説明がある。
 しかし、NRA傘下の企業が作っているのは、油脂系の製品にとどまらない。このシリーズで何度も取り上げたBSE禍の元凶、「肉骨粉」も主力製品の1つだ。
 NRAのウェブサイトでは、renderingの定義を「精肉産業の廃棄物を、動物のエサや工業製品に再生させること」とし、全米の「屠畜場・枝肉処理工場・スーパーマーケット・精肉商・レストランからは、少なくも毎週4万トンの動物系廃棄物が出る。もし、rendering産業がなければ、畜産や養鶏から生ずる副産物は、たちまちゴミの堆積場にあふれかえり、腐敗した廃棄物にたかる有害な微生物や生き物によって、大地と地下水が汚染されてしまうのだ」と、renderer(動物系食品廃棄物処理企業)の存在意義を強調している。
 それは、よく分かる。だが、消費者としては、どうしても「動物系廃棄物を動物のエサに再生させる」ことには、大きな抵抗がある。まして、スクレイピーやクールー病、BSEが食物連鎖の中で発生していること、そして、病原体とされるプリオンが、130℃の高熱や通常の薬品処理でも破壊されないことを知った上に、米国でBSE牛が潜在する可能性が高まったとあれば、恐怖を感じて当然だろう。おまけに米国などの"文明国"では、原因がよく分からない脳の病気「若年性アルツハイマー」も、増えているという。
 だが2003年には、この業界が2,960トンの肉骨粉を生産し、506トンを海外に輸出している。そして今年度も、輸出振興の販促助成金がつけられているのが現実だ=数字は米統計局。(;)