尽きぬ不信(上)2005年07月18日 08:14

 2001(平成13)年9月、日本で初めてBSE牛が確認されて、もう4年近くになる。以来、幸いにも国内で感染したvCJD患者は1例も確認されていない。しかし、BSE牛と確認された牛は20頭に上っている。人間に被害が及んでいないのは、BSE牛の第1例確認直後から政府の主導で始まった、肉牛解体時の特定危険部位の除去、全頭検査、肉骨粉の全面的な流通禁止などの感染防止措置が、一定の成果を挙げているからだ。
 だが、この間、私が牛肉を食べたのは、結婚披露宴に招かれた際の2度だけである。正直言って、怖い。ひょっとすると、90歳まで生かされるかも知れぬ。ならば、怪しげなものを口にして、せっかくの命を台無しにしたくはない。それよりも、BSE・vCJDの危険が本当に去ったとは思えないのだ。
 なぜか。──隠さずにいえば、牛肉の生産・流通に携わっている業界、それを監視・指導する行政、国民に真相を伝えるのが責務のメディアに対する不信感が拭えないのである。
 例えば農水省。英国で初のvCJD患者が確認された1996年に、肉骨粉の牛への給餌を禁止する「行政指導」をしてはいる。だがこれは、WHO(世界保健機関)の勧告を受けた「課長通知=4月16日付」に過ぎず、実効性の乏しいものだった。
 それが証拠に、2001年に国内第1例のBSE牛確認の事態を受け、全畜産農家の全頭立ち入り調査をした結果、実際は、全国で少なくとも約5,000頭の牛に肉骨粉が与えられていたことが分かった。
 また、財務省の「日本貿易月表」によれば、1996~2000年の5年間に、年平均約23,500トンの肉骨粉が20カ国から輸入されていた。これらには豚・鶏・羊由来のものもあり、全てが牛由来ではない。また、レンダリング処理も、国際的な安全基準である「133℃で3気圧の下に20分」を満たしているものも混在し、給餌先も牛・豚・鶏・ペットとまちまちで、追跡が困難だ。しかし、日本のBSEが、輸入された生牛・子牛用加工乳・肉骨粉・動物油脂のいずれかによることは動かせない。(;)