食わぬで自衛2005年07月28日 08:18

 BSEの病原体「異常プリオン」によって感染するvCJD(変異形クロイツフェルト・ヤコブ病)は悲惨だ。数年から十数年の潜伏を経て発症する。視力障害・めまい・認知障害・錯乱などの症状が現れ、徐々に筋肉痙攣や運動障害を起こし、廃人のようになって、大半が発症後3~12カ月で死ぬ。治療法は、まだ無い。高齢者に多いCJDと違って、若い人の罹患が比較的多いのも特徴だ。確かにvCJDと診断されるには、死後に脳の病理解剖をするしか現実的な方法がない。そのため、増えている「若年性認知(障害)症」の患者に、vCJDが紛れている可能性もある。
 不可解なのは、米国側が「BSEは、発症する約6ヵ月前までは検査で陽性とは出ない」としながら、「検査で陰性と出て、危険部位を除きさえすれば安全」と主張する点だ。それなら、処分時に陰性と出た牛の中に、6カ月後に陽性に転ずる牛が含まれているはずだ。それでも安全か。検知できぬ感染はないのだろうか。危険部位除去後の、枝肉の安全確認手段はあるのか。
 米国は、今後もさまざまな手段を使って、牛肉の対日輸出再開へ向けての圧力を強めてくるだろう。年20億ドル近くの損失を放置しておくわけがない。当面の攻勢は、秋に議会が再開されるころになると予想される。圧力には、いろいろなカードが使われるに違いない。貿易、防衛、外交、……どの面をとっても、米側に有利なテコがそろっている。
 だが、どんなに確率が低くても、感染したら死ぬBSE牛を食わされるのはまっぴらだ。仮に、政治決着の結果、米側の望む通りに輸入が再開されても、国民にはレジスタンスの道がある。食わないで自衛するのだ。そもそも問題の根は、民族の食の自律への強要である。ならば、かつてナチス・ドイツに占領されたフランス国民が、ゲリラ戦とサボタージュで対抗したように、食わないレジスタンスを闘えばよい。本質は商売だ。お客の口をこじ開けて食わすわけにはいくまい。
 残念だが、当面の利益に目がくらんで同胞を裏切る者も出る。しかし、もし将来、vCJDが多発するような事態になったら、裏切り者は「未必の故意」を問われることを覚悟せねばならない。(;)