新聞の無法(6)2006年05月29日 07:56

 紙面で嘘を書けば命取りになる新聞が、こと営業面では平気で嘘を連ねる。実はその姿勢が、読者をどんどん新聞から遠ざけていることに、新聞経営者が気付いていないようだ。特指見直し反対の主張の中には、まだまだ多くの、保身のための嘘と屁理屈がちりばめられている。
 主張は、「販売店の価格競争は、配達区域を混乱させ、戸別配達網を崩壊に向かわせる」と言うが、新聞特指が廃止されても、再販制度が維持されていれば、建前上の定価は守られ、そもそも価格競争は起きないだろう。だから、配達区域の混乱も起きまい。まして、新聞社の側が「同一紙・同一価格」を堅持する決意ならなおさらで、戸別配達網が崩壊するなどとは、論理がつながらない。
 また、「戸別配達網の崩壊は、多様な新聞を選択できる読者・国民の機会均等を失わせることにつながる」というが、前述のように、再販制度が保たれている限り、特指の廃止は戸別配達の崩壊には結ばないから、これも根拠薄弱だ。うがちすぎかも知れぬが、「戸別配達網の崩壊」を喧伝するのは、読者の9割近くが戸別配達制の維持を望んでいる実態をにらんで、ブラフ効果を狙った一種のデマゴギーではないか。
 新聞業界が、特指の見直しにこうまで激しい反発をする態度から透けて見えるのは、実は、既得権益としての戸別配達網、つまりすでに掴んでいる購読者を、何としてでも守りたい一心である。そして、価格競争はおろか、現状の見直しすら拒絶する利己的・独善的な魂胆だ。
 確かに、新聞は日用品など他の商品とは異なる「知識・文化を内容とする商品」である。しかし、同様の商品である書籍・雑誌は、新聞と同じく今も再販制度を適用されてはいるが、特殊指定は受けていない。
 今回、公取委が関係業界と共に見直しを行った新聞以外の特指4分野は、業界の真摯な対応によって、缶詰・瓶詰業は2月1日、海運業は4月13日、オープン懸賞広告での誘客方法は4月27日に、それぞれ廃止が官報で告示され、教科書販売も廃止の方向へ、詰めの段階にある。(;)