刺された男気 ― 2006年12月15日 08:01
隣家のお姉さんの続きだ。──夏の夕方、生け垣を隔てた隣の庭で大騒ぎが起きた。お姉さんが、「キャーッ」「ヒェーッ」と悲鳴を上げて、庭を逃げまどっている。洗濯物を取り込みに出て、何かに襲われたらしい。
母は出かけて留守だったが、こうなると6歳の子どもながら、男気がうずく。垣根のこちらから、ありったけの声を絞って、「どうかしましたかーッ」と、声をかけた。すると、ようやく落ち着きを取り戻したお姉さんが、「ハチよ、ハチ。危ないから、近くに来ちゃだめッ。刺されると、たいへんだから」と、洗濯物を抱え、肩で息をしながら言う。
そうと知っては、放って置けない。ハチなら一度、父が母を襲ったやつを、軒下の巣ごと捕虫網でつかまえ、網に閉じ込めたまま、熱湯を注いで征伐した一部始終を見たことがあった。
あの時のように、ジョウゴみたいな形をした巣の付け根のところに、捕虫網のヘリの針金を引っかけて、くるくるっと網で巻いてしまえば、やっつけられる。
「今、行きまーす」と叫んで、物置から細長い布袋に納まった父の捕虫網のセットを掴むや、まっしぐらにお隣へ。網は、父が工夫して、釣り竿のように柄をつなげると、長さを3倍に伸ばせる優れものだった。
隣の裏木戸を開けて、庭に立つと、すぐ柄をつなげ、お姉さんの指さす軒下を見上げると、いた、いた。直径10センチほどもあるアシナガバチの巣に、7~8匹がたかっている。巣の周りにも2、3匹、ぶんぶん飛び回っている。お姉さんの、止める声は聞こえない。
後先のことなど考えずに、捕虫網をさっと突き出し、父の真似をして素早く巣とハチの群を網の中に巻き込んだまではよかった。次の瞬間、左の眉の上と、上唇の右端に、居ても立っても居られないほど強烈な痛みが走った。「い、いてーッ」──あとは「ウワーン」と、歳相応に泣き出した。
お姉さんが、ピンセットで小さな針を抜き、「おバカさんねぇ」と、アンモニアを塗ってくれたが、帰宅した父は、「こりゃ、オイワだ」と大笑い。それでも「オイワって何?」と訊く子だった。(;)
母は出かけて留守だったが、こうなると6歳の子どもながら、男気がうずく。垣根のこちらから、ありったけの声を絞って、「どうかしましたかーッ」と、声をかけた。すると、ようやく落ち着きを取り戻したお姉さんが、「ハチよ、ハチ。危ないから、近くに来ちゃだめッ。刺されると、たいへんだから」と、洗濯物を抱え、肩で息をしながら言う。
そうと知っては、放って置けない。ハチなら一度、父が母を襲ったやつを、軒下の巣ごと捕虫網でつかまえ、網に閉じ込めたまま、熱湯を注いで征伐した一部始終を見たことがあった。
あの時のように、ジョウゴみたいな形をした巣の付け根のところに、捕虫網のヘリの針金を引っかけて、くるくるっと網で巻いてしまえば、やっつけられる。
「今、行きまーす」と叫んで、物置から細長い布袋に納まった父の捕虫網のセットを掴むや、まっしぐらにお隣へ。網は、父が工夫して、釣り竿のように柄をつなげると、長さを3倍に伸ばせる優れものだった。
隣の裏木戸を開けて、庭に立つと、すぐ柄をつなげ、お姉さんの指さす軒下を見上げると、いた、いた。直径10センチほどもあるアシナガバチの巣に、7~8匹がたかっている。巣の周りにも2、3匹、ぶんぶん飛び回っている。お姉さんの、止める声は聞こえない。
後先のことなど考えずに、捕虫網をさっと突き出し、父の真似をして素早く巣とハチの群を網の中に巻き込んだまではよかった。次の瞬間、左の眉の上と、上唇の右端に、居ても立っても居られないほど強烈な痛みが走った。「い、いてーッ」──あとは「ウワーン」と、歳相応に泣き出した。
お姉さんが、ピンセットで小さな針を抜き、「おバカさんねぇ」と、アンモニアを塗ってくれたが、帰宅した父は、「こりゃ、オイワだ」と大笑い。それでも「オイワって何?」と訊く子だった。(;)
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