嵐は去ったか2005年07月05日 08:32

 英国保健省(Department of Health)が6月3日に公表した数字によると、BSEに罹った牛を食べてCJDに感染したとみられる同国のvCJD(変異形クロイツフェルト・ヤコブ病)の患者は、1995年の3人から始まって、2003年まで年々2桁の人数が確認されたが、2000年の28人をピークに減少傾向に転じ、2004年は9人と、1桁に納まった。2005年には、すでに2人が確認されているが、1995~2005年の累計は150人となっている。このうち、生存が確認されているvCJDの患者は、僅か5人。死亡率は極めて高い。因みにvCJDの犠牲者は平均で20歳代後半だ。
 このような推移から、専門家の大勢は、英国のvCJDは終息に向かっていると見ている。ところが、2005年3月4日付けの英紙『ガーディアン=Guardian』に、こうした楽観論に水を浴びせる微生物学者の見解が紹介されて、読者にショックを与えた。
 同紙によると、王立ランカスター病院のディーラー(Stephen Dealler)博士は、英国のvCJDが漸減傾向にあることを認めながら、これを「第1波の終息」にすぎないと捉え、1980年代の半ばから後半にかけて、10代の若者がハンバーガーなどに混じっていたBSE汚染肉を食べて感染しているはずで、「第2波の到来」を想定すべきだというのである。
 英政府が、食肉の解体時に危険部位の除去・焼却の励行を義務づけ、市場にBSE汚染肉が出回らなくなったのは1989年11月以降であり、それまでは、汚染肉が大っぴらに流通していた事実と、vCJDの潜伏期の長さから言って、ディーラー博士の見解は、むしろ警告と言うべきものかもしれない。 さらに博士によると、成人のものより腸壁の透過性が高い赤ん坊が、汚染されたベビーフードから感染した場合は、発病まで25年ほどが、潜伏常態になるという。
 また同博士は、40歳代未満に大きく依存している献血が、vCJDの潜在患者によって汚染されることは世界的規模の悪夢であると指摘しており、彼の見解を政府の海綿状脳症審議会に提起するとしている。(;)

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