女性の役割(下)2007年02月16日 07:56

 今、日本は再び未曾有の「国難」に直面している。一つは、若い女性が産まないための、そして若い男性も子を持つことに消極的であるための「少子化の危機」だ。
 加えて、戦後の混乱期に、ほとんど成り行きにまかせて「団塊の世代」を生むなどした「稚拙な人口政策」があいまって生じた「高齢化」が、「少子化の危機」と合体して、祖国の未来に衰運を予見させる「国難」として立ちはだかっている。
 目前の「国難」は、その到来が、前回の国難・戦乱より遙かに早くから予測できていた。危機を回避する道は、戦後の年齢別人口構成曲線を、富士山型でなく砲弾型に誘導すべきだった。それは、理論上は明白だったが、国家・社会が個人の子作りに介入できない体制が、すでにできていた。民主制度の根底をなす、人権と個人の自由尊重の原則がそびえ立っていたのだ。政治が手を出しかねたのは無理もない。
 だが、奇跡とも言われる経済繁栄のお陰で、あり余る自由と時間を享受しながら、それが、祖母たちの過去の労苦の賜であることを顧みない若い女性が、「産む、産まないは女の自由」と高言するに任せることはない。
 同時に復興すべきは、国家という視点だ。模範があった。1960年代から特殊合計出生率の低下に悩んでいたフランスは、国力の衰微と、伝統ある年金制度の破綻を深刻に憂慮して、人権や個人の自由を侵さない「巧みな人口政策」を積極果敢に推進した。出生率は、1993~94年に1.70と底を打って上昇に転じ、2006年に2.00まで回復した。今、日本は、2005年で1.26。
 「巧みな人口政策」は、妊娠・出産・育児を通して、税制上の優遇のほか、出産前の一時金12万4千円、3歳以下の育児補助金1カ月約2万5千円をはじめ、夫婦の出産・育児休暇など、「子を産み育てることが損にはならない」制度で、人口回復に成功しつつあり、日本も学ぶべき点は多い。国難には、国費も果敢に注ぎ込むべきである。
 公的支援の拡充は、今や焦眉の国家的課題だ。だが、出産は女性にしかできない。国難の第一線は女性に委ねられている。若い女性が、権利には義務が欠かせず、今日の繁栄には過去の忍耐があったことを、ぜひ想起して欲しい。(;)