記者の勇気(上)2006年02月03日 08:02

 パミラ・ヘス(Pamela Hess)は、米国防総省(ペンタゴン)を担当する、UPI通信の女性記者である。1999年にUPI入社、アフガニスタンのカブール勤務や、ホワイト・ハウス詰めの経験もある。
 昨年は、8月から10月初めまで9週間にわたって、流血が止まないイラクを現地取材している。その彼女が、記者としての戦場体験を踏まえ、勇気ある「問題提起」をした。
 1月31日付で彼女が書いた「ウッドラフ重傷の報道に米兵の疑問」というタイトルの記事には、一線で闘う兵士の視線で捉えた戦争報道と、有名人偏重社会への批判が篭められている。
 「ウッドラフ」とは、1月29日、イラク中部タージ付近で、新生イラク軍の装甲車に乗って取材中、道路脇に仕掛けられた爆弾と、追い討ちの銃撃で重傷を負った米ABCテレビの看板ニュース番組「World News Tonight」の新キャスター、ボブ・ウッドラフ=Bob Woodruff(44)のことだ。この攻撃で、同僚のカメラマン、ダグ・フォークト(Doug Vogt)も大けがをした。
 イラク戦線では、兵士らもインターネットを通じて本国のテレビ番組や新聞の電子版に接することができる。2人の災難には、兵士らもみな同情し、容態を気遣ったが、ヘス記者のもとには、1士官のこんなメイルがイラクから届いたという。──「重傷の2人が、なぜあんなに大ゲサに扱われるのか。彼らの災難を、新聞という新聞が1面で報じ、アメリカ中のテレビが流したことに、僕らはびっくりしている。まるで、第1海兵師団かなんかが全滅したような騒ぎだ」。
 ヘス記者は、別の高級将校が同僚記者に話した言葉も伝える。──「問題は、記者さんたちの方が、いつも、ただの兵隊たちより大事にされているってことだ」と。
 そして、バグダッド駐留の他の将校からのメイルも紹介している。──「アメリカ人、イラク人を問わず、20代、時に10代の若者に、ここで毎日起きている悲劇を、ドラマ仕立てにして見せられるのもムカつくけれど、この事件でのイラク人の死傷については、まるで意味がないみたいに、一言も触れない報道もあるが……」。(;)

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