新聞の無法(11)2006年06月05日 08:29

 公正取引委員会は、5月31日、昨秋から提唱してきた新聞の特殊指定への見直しを断念、その旨を自公両与党執行部に伝えた。さらに、「新聞特指の見直しについては、公取委と業界の議論が噛み合わず、今回は結論を見送ることとした」旨を、6月2日、同委のHPにも公表した。
 自公両党はこれを受けて、「新聞特指維持のための独禁法改正案」の今国会提出を見合わせることに決めた。新聞業界の横紙破りがまかり通ったのである。
 公取委が、新聞取引の現況調査にすら着手することなく、当初に結論を出すとした期日、6月末を1ヵ月も前に、見直し作業を打ち切ったことには、多くの国民が疑問を抱いて当然だ。今回見直し対象の5分野のうち、新聞を除く4分野の特指廃止は全て決まった。
 新聞業界の抵抗は熾烈を極め、国会の全政党を味方につけ、新聞労連はもとより、各地の地方議会で特指維持声明の採択を取り付けるなど、正気の沙汰とは思えなかった。
 背景には、業界の恐るべき実情と厳しい危機感が潜んでいるのだが、新聞界は、これで政界に対して大きな借りを作った。新聞ジャーナリズムの公正さと批判機能を保つために、決して受けてはならぬ「権勢の庇護」を、全政党から頂戴したのは自殺行為だ。不偏不党の理念が泣いている。
 公取委としても、このような政界の思考停止的なナダレ現象を、「世論を背景として」と表現する政治圧力には、見直し着手以前に撤退せざるをえなかったのだろう。独禁法自体の改正まで持ち出した政治家たちの、新聞に対する特別扱いに、他の業界関係者はもとより、国民はとうてい合点が行かないはずだ。
 それどころか、新聞業の現実をつぶさに知っている読者・広告関係者などは、「世論」に藉口した政治家・新聞人を嗤っている。今回の例は、国民の政治不信も深めた。
 新聞業と政治業の共益維持に奔走した、中川秀直自民党政調会長は日経の、同党の「新聞の特殊指定に関する議員立法検討チーム=高市早苗座長」がまとめた独禁法改正案を、何の異論もなく認めた同党「経済産業部会」の松島みどり部会長は朝日の、さらにこの3人が所属する派閥の長で、小泉首相にも次期政権にも影響力を持つ「清和政策研究会」会長の森喜朗前首相は産経の、それぞれ記者出身であることを、国民はしっかりと記憶に留めておくべきでだ。
 新聞界は堕落の極にある。政界と癒着して業界の無法を貫くようでは、大崩壊は近い。(;)

コメント

_ とんこう ― 2006年06月05日 09:18

新聞業界のことは、よく判らないのですが、一連の竹庵様の書き込みを
読むと危機的な状況にあるらしいということがなんとなく伝わってきます。
新聞、テレビ、ラジオ、インターネットが主な情報源なのですが、新聞記事
は、正しい事として読んでいます。大崩壊とは、ほんとうのことなのでしょうか?

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