2005年04月12日 08:18

 桜が満開になった。筍の季節である。早朝、まだ影が長いうちに、裏山を越え、農家の竹林に走る。竹の枯葉が薄く敷いた地面に、ほんの2~3ミリ幅、長さ3~4センチで、3方か4方に走るヒビ割れを捜す。ヒビ割れの交わるところが、わずかに盛り上がっている。地表には、まだ先端さえも現れていないが、地中の命が動いているしるしだ。
 細身の唐鍬を、ヒビの交わりを中心に、20センチほど回りに打ち込む。地下茎に触れたら、ヒビ割れの中心に向け、地下茎の背を滑らせる感じで引くのがコツである。やがて、ザクッという感触で筍が地下茎から切り離される。黒土より黄土色の粘土質の竹林産が美味い。
 竹カンムリに旬と書くのは、旬日で竹になってしまうという意味だそうだが、孟宗竹の場合、食するのは地下にあるうちにかぎる。先端が地表に現れてからでは遅い。
 穫れたてなら生でもいけるが、大鍋で茹で、アク抜きをした方が無難だ。4、5枚だけ皮をむいて、大きいものは縦半分に切り、米糠1合ほどと鷹の爪を1、2本入れ、水から弱火で2時間ほど茹でる。火を引いたら自然に冷ます。冷めたところで、冷水で糠とアクを洗い流し、清水に浸す。そのまま薄く削いで、刺身もいい。
 根本は、厚さ8ミリほどにスライスし、表面に深さ2~3ミリの切れ目を縦横3ミリ間隔で網状に入れ、バター焼きにするとモダンな味が楽しめる。先端の柔らかい部分は、1センチ角の賽の目に切り、乳鉢で潰した木の芽を白味噌に混ぜ、少々のミリンと酒でゆるめに練った萌葱色の味噌とあえ「木の芽あえ」にするか、薄く切って鯛などと吸い物に。
 中程は、適当な大きさにざく切りにしたものを、鰹節だしをベースに、薄口醤油、味醂、砂糖極く少々、白だし醤油、酒であっさり淡色に仕立てた煮汁で若布と煮る。深めの鉢に盛ったら、季節を違えず芽吹く山椒の木の芽を載せて「若竹煮」。皮の柔らかい部分は、短冊に切って、ラー油をたらした炒めものか、若布と一緒に味噌仕立ての「若竹汁」に。
 野趣に富む変わったところでは、太さ5~6センチの新鮮な生のものを、皮を3、4枚むいてよく洗い、縦に2つに切ってそれぞれサラン・ラップにくるみ、5分ほど電磁調理器で"チン"する。アツアツのままラップを脱がせ、さらに縦2つに切って、バターか、醤油をかけた糸がきの鰹節をまぶして、柔らかいところだけ囓る。お勧めの絶品だ。(;)