不思議な反射2005年04月28日 07:24

 1年ほど前から、奇妙な心理・生理現象が、私に起きている。生理学でいう「反射」「条件反射」、あるいは心理学的な「連想」にもピタリとは当てはまらない、不思議な現象である。
 家に猫がいて、廊下の片隅に猫用のトイレが置いてある。市販の「猫砂」と呼ぶ吸湿・脱臭性の砂を張った比較的大きな容器だ。猫はきれい好きな動物で、トイレを清潔にしておいてやりさえすれば、滅多に粗相もなく、毎日そこで大小の用を足す。だから、1日に少なくとも1回、猫のためにも人間のためにも、トイレを清掃し、適宜、新しい猫砂を足してやる。
 問題の現象は、この猫用トイレの掃除の時に、ほぼ毎回起きる。テニスのボールほどの球状に固まった小の方や、かりんとうを思い出させる干からびた大の方を、専用の"炭挟み"で挟んでゴミ袋に収容している時、決まって古い友人のSの顔が思い浮かぶのだ。
 何がきっかけで、そうなったのか、なぜSなのか、わからないまま、その現象が続いている。まぶたに浮かぶSは、いつも人なつっこい微笑を浮かべているし、猫のトイレの掃除をするたんびに君の顔を、……とも言えないから、本人にはまだ報告したことがない。
 もう1つ。学生時代からの友人で、歳に似合わぬ慨世の熱血漢がいて、2日と置かず、朝の8時ごろ電話を掛けてくる。彼にも新聞記者だった過去があり、内外の政治・外交・社会の情勢に今も強い関心を抱き続け、知識も豊かだ。情報を交換したり、分析を比べ合ったりする意味で、この電話は得難い。
 ところが、この1年ほど前から、彼と電話をしている最中に、決まって便意を催すようになった。電話が来ない朝には、必ずしもその時間に催すわけではないから、引き金は明らかに受話器の向こうの彼の声である。有難いのは、子機という文明の利器で、当方は書斎の子機を耳に当てたまま、気兼ねなくトイレに失敬する。
 先方には、こちらの内情は漏れないから、時事の問題を捉えて憤激したりしている。数日前、当方の相づちに、「オイ、体の具合でも悪いのか?何か息づかいが荒いようだが……」ときた。「ウン、いや別に。オレもその件じゃ全く憤慨しているんだよ。ウン」。(;)