重要な豆ニュース 2005年04月20日 08:39

 厳しい報道管制をすり抜けて、中国から漏れて来る情報には、断片的ながら、たいへん示唆に富む内容をはらむものが、結構多い。
 中国で高まりを見せている「反日デモ」に気を取られていた4月10日の週に、北京の中南海界隈で、中国軍の退役軍人約1000人が、政府に抗議する座り込み集会を開いていたという。
 中南海といえば、官庁や中共の要人の住まいが集まっている政権中枢部である。それに、退役組とはいえ、共産党に最も忠実で、政権を支えてきたはずの軍人が反政府集会を開いたとあっては穏やかでない。同国の史上、極めて異例なことだ。
 この情報は、週末15日ごろ、北京の外人記者にも届いたようで、日本では16日付けの朝刊にロイター電や共同電で報じられた。 短いニュースながら、退役軍人たちが訴えたのは、民間企業などへの再就職に困難をきたしている窮状だという。どうやら、11日から13日にかけて座り込みが続き、最後は公安警察によって解散させられたようである。
 中国共産軍は自給自足が原則とされ、部隊ごとに農場や工場を自営して隊員を養うかたわら、製品を市場にも供給してきた。それが、改革開放路線の下で導入された市場経済の厳しい競争にさらされ、リストラを迫られているとは仄聞していた。実態は、もっと深刻化していたようだ。
 もう一つ、これも反日デモの喧噪にかき消されそうだったが、16日の台湾中央通信によると、広東省潮州市で地元の5000人を雇って操業している台湾企業「美美電池」を、同日、数千人の住民が包囲、施設を壊し器物を略奪したという。愛国無罪の矛先は、資本主義でもあるようだ。
 工場側は警官の出動を要請したが、無視されたとしている。この工場は、電池を生産しており、暴徒らは排水が汚染されていることを襲撃の理由に挙げたが、証拠は示せなかったという。工場側は、水質は規制値をクリアしていると主張し、何者かの扇動を疑っているとある。
 中国の改革開放が、広い範囲で貧富の懸隔や弱者切り捨て、道徳的退廃など、極めて深刻な歪みを生んでいるが、小さなニュースにも改革開放路線が揺さ振られている状況が窺える。(;)